【現代怪奇譚】蟲(第3話)
幽霊とかはみたことがないですけど、私が経験した中でホント苦労した話。
都内でアパートに引っ越したばかりの頃、ちょっと異常じゃない?って思う現象があった。
そのアパートってのも築年数が経ってる割にはきれいで広かったし、当然事故物件とかでもなく、角部屋、日当たり良好で6万以下っていうかなり良い条件だった。
まぁ難を言えば、マンションじゃないからちょっと建てつけ悪い、くらいかな?
でもどういう訳か、入居したいって伝えたら更に5千円下げてくれたんだよね。
あとそこさ、全8軒の部屋数なのに最初から3軒くらいしか住んでないらしく、異様に静かだったのを覚えてる。
前置きが長くなったけど、私が悩まされたのは虫だった。
誰もが嫌いな黒いヤツとは最初毎日のように格闘した。
地方転勤とか、異動とかで引越しが多かったけど、こんなのは初めて。
もちろん不動産屋にも話したけど、反応は悪く、「ご入居の前に駆除剤で対応済ですので…」くらい。
一体燻煙剤をあの頃いくつ買ったか分からない。
毎週のようにやってたけど、次の日には出る。
そんな状態だったから、もう殺虫剤での攻防に切り替えた。
また、私を悩ます虫は黒いヤツだけではなかった。
まるで当番制か?と思うくらいに、カメムシの日もあれば、見たこともないタマムシ?カミキリムシ?みたいな日も、モスラみたいなヤツの日も、大量の羽蟻の日もあった。
しかも、蜂に至ってはベランダや窓にしつこく巣をつくりにやって来る。
元々虫嫌いな私は、けっこう精神的に限界だった。
そんなある日、大学時代の同級生と会う機会があって、東北地方出身のこの子は、家系的にちょっと霊感とか強いみたいな子だった。
で、「引っ越してきたばかりだけど、真剣に引っ越しを考え始めた」って話をしたら、その子はちょっと考えてから、ある神奈川のお寺を紹介してくれた。
結果から言うと“虫封じの御祈祷”をしてもらって、虫は一切出なくなった。
元来こういうところの虫封じってのは「疳の虫」とか「浮気の虫」みたいな実際の昆虫に対していうんじゃないらしいけど、何故か効果はテキメン。
そういう訳で、ここの物件でこれ以降虫を見ることはなくなり、2回更新した。
だけど、私が住んでいる間に入居したと思しき人達は半年くらいするといなくなって、出入りが激しく、最終的に私が引っ越す時点で住んでいたのは、私が住み始める前からいた一軒のみになっていた。
実際に会ったことはなかったけど、ここはオーナーの対応がよく、入居時の値下げをはじめ、2回目から更新費をナシにしてくれたり、無料のインターネット回線を付けてくれたりと何かと有り難かった。
だから虫のことでは本当に苦労したけど、幸い虫封じのお陰で問題もなくなったし、異動がなければまだ住んでいたかもしれない。
私は怪談とかには懐疑的な方だけど、この一件は同級生にマジで感謝したし、びっくりするくらいパタリと虫の影も見なくなったから、自分の中では最大の不思議体験。
とにかく害虫とかに悩まされてる人にはこの“虫封じ”を試して欲しいと思う。